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2024.10.07 お知らせ

「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」

2024年9月に「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」の結果が公表されました。
https://www.rinshokaku.com/magazines/2024/57_5.pdf

全国のPET施設に、線虫がんリスク検査(N-NOSE)を契機としてPET-CTを含む検診を受けられた方のがん発見率、
また同時期に各施設で受診された方のがん発見率などを集計したものです。

線虫がんリスク検査で高リスクということでPET-CTを受診された方については
全1053例中 がん発見例は22例 がん発見率は2.09% でした。

参考として、同時期に線虫がんリスク検査と関係なく、PET-CTを含む検診を受けられた方については
全 27397例中 がん発見例は359例 がん発見率は 1.31% でした。

線虫がんリスク検査を契機にPET-CTなど各種の検査を受けられてもほとんどがんが見つからないという声が多くの医師から挙がっていました。学会でもそのような報告が複数挙がったため、アンケート調査という形で集計し全国のPET-CT施設の状況把握を行ったというものです。線虫がんリスク検査の精度を検証するために行われた前向きのデザインされた試験では無く、データとしてはいろいろな制限・問題があります。これにより線虫がんリスク検査の精度を検証できましたというものではありません。

今回の結果から判明したことは、線虫がんリスク検査にて高リスクという判定を受けても、PET-CTを含むがん検診でがんが発見される可能性は低い(約2%)ということです。もちろんPET-CT等にてすべてのがんを検出できる訳ではありませんので残りの約98%の人にがんが無いと言えるものではありません。また線虫が現時点では各種検査で見つけることができない時点のがんに反応している可能性は否定ができません。これは残りの98%の方の今後の経過を長期的に見ていく以外には検証できません。

線虫がん検査で高リスクの方のがん発見率が、それ以外の方より少々高いという数字になっていますが、これについて考えられることがいくつかあります。
まず、線虫検査で高リスクということでさらなる検査を推奨されている割合は、現在は受診者の約5.4%、以前は約10%や20%の時期がありました。今回公表されたデータはこれらが混在したものになります。線虫検査を受けられた方の中でリスクが高い方が絞り込まれた上で、PET-CTを受けられた結果、がん発見率が2.09%ですので、線虫検査と関係なく受診された方の1.31%と比較して、がん発見率が十分に高くなったとは言いがたい結果と考えられます。
また、PET検診では初回受診者と頻回受診者ではがん発見率が大きく異なるということが知られています。報告にもよりますが当院の実績では2倍程度の違いがあり、初回検査の方ががん発見率が高くなります。今回の調査ではこの点が大きくデータに関わっているかと推測されます。線虫がん検査を契機の方は初回受診者が多く、それ以外の方は頻回受診者が多いと考えられます。ただし、今回のアンケート調査では初回受診かどうかについての集計はとっておりませんので推測になります。

線虫検査により絞り込まれた方からのがん発見率が期待される程に高く無いということは、
中~低リスク判定の方にもがんを持っている方が相当数含まれているという事が示唆されます。
実際に当院の実績ではC判定相当の方から5名にがんの診断が確定しています。がん診断が確定した8名のうちの5名です。
また他院ではがん患者10名の検査にて、すべてがAもしくはB判定であったという結果が報告されています。
低もしくは中リスクであったからといって、自分にがんは無い、と判断することはできないということになります。販売会社も述べておりますが、がんのリスクを判定するものであり、がんが無いと保証するものではないですので、他の検診と組み合わせて利用することがやはり必要と考えられます。

今回の調査は後ろ向きのアンケート形式という調査ですので、エビデンスというものには乏しく、線虫がんリスク検査の精度を検証できるというものではありません。しかしながらある程度の現状が見えたとは思われます。線虫がんリスク検査で高リスクと判定された方が、PET-CTを受診してみるかどうか等の参考になれば幸いと思います。

D判定やE判定とされた方にPET-CTをお勧めするか?と聞かれると非常に回答は難しいです。最終的には個人の考え方になると思います。
数字からいえば、線虫がんリスク検査で高リスク判定だからという理由でPET-CTを受けるというのはあまり意味が無いということになるかと思います。高リスクと判定されてもがんが見つかる可能性は2%程度なので、98%の人は結果としてかなりの無駄な出費・手間になってしまいます。
しかしがん検診というのは、結果としては無駄に終わることが大半というものではあります。
高リスク判定というのはどうしても気になってしまうと思いますので、メンタル面も考慮しますと受ける価値はあるかとは思います。

こちらも御参照ください。
https://www.fwpet.net/news/4

線虫検査自体を受けるべきかどうかという質問もありますが、こちらに関しては回答を控えさせていただきます。
検査を受けられる前に検査のメリット、デメリットなどをしっかりと検討をされることをお勧めします。

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HIROTSUバイオサイエンスより、「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」により、「N-NOSE」の有効性、実社会データで確定、論争に終止符。
というようなプレスリリースが出されています。https://hbio.jp/news/2024/09/20240927/
この内容に関して調査班は一切承知しておらず、内容に疑問があります。また協力関係があるかのようにも取れますが、協力関係は一切ありません。

日本核医学会PET核医学分科会のホームページを御参照ください。
https://jcpet.jp/2024/10/senchu-chosa.html
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